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適応(獲得)免疫とは?自然免疫との違いと働きを解説

病原体を体内に入れないようにすることも大切ですが、体に入ってしまった病原体と闘うためには適応(獲得)免疫が大きな役割を果たします。本記事では適応(獲得)免疫の役割や自然免疫との違い、免疫を高める方法を解説します。

適応(獲得)免疫とは?

さまざまな病気に強い体を作るためには「適応免疫」を獲得したほうがいいと耳にしたことがある人もいるでしょう。適応免疫と自然免疫はどのような違いがあるのか、また適応免疫の役割について解説します。

自然免疫とは

自然免疫は生まれつき持っている免疫のことで、病原体やがん細胞などの細胞の異常を察知して体外に排除する仕組みです。免疫のある病原体が体内に侵入したとき、自然免疫が働くと病原体に穴を開けたり、溶かしたりして処理できます。また、マクロファージなどの食細胞が病原体を食べて処理することもあります。

自然免疫は何度も同じ病気にかかったからといって増強されることはありません。人が持っている自然免疫は遺伝などの影響を受けてもともと決まっているものなので、自然免疫で対応できる病原体の種類が増えることもないといわれています。そのため、自然免疫というフィルターを潜り抜けて細胞の異常が進むと、がん細胞などに成長してしまうのです。

自然免疫と適応(獲得)免疫の違い

自然免疫が生まれつき持っている免疫であることに対して、適応免疫は生まれてから出会った病原体のデータを記録して、次に同じ病原体に出会ったときに適切な対処ができるように働きます。そのため、自然免疫が病気にかかる前に病原体を排除するのに対し、適応免疫は病気にかかることで獲得できるという特徴があります。一度かかった病気にかかりにくくなったり、再びかかったときに一度目よりも軽い症状で済んだりするのは、この適応免疫が病原体を記憶し、体内に抗体を作っているためです。

適応(獲得)免疫の特徴

体内には無数に存在する病原体の一つひとつに反応できる分子が存在します。分子は病原体をはじめとする異物には反応するものの、自分には反応しないという特徴を持っています。体内に侵入した病原体や異物のデータを記録し、再び同じ病原体や異物を察知したときに体内への侵入を防いだり、症状が軽く済むように対処したりするのが適応免疫の役割です。生まれつき備わっている自然免疫に対し、適応免疫を獲得するためには数日かかるといわれています。

適応(獲得)免疫の細胞の種類

一度かかった病気にかからないよう、または最小限の症状で対処できるように働く適応免疫を獲得するためには、おもに次の6種類の細胞が働いているといわれています。

  • B細胞:抗体を作ったり、侵入した異物が危険かどうかを判断し、抗原を排除したりする役割を持つ
  • 形質細胞:B細胞が成熟した細胞。抗体を量産して抗原を攻撃したり、自然免疫を助けたりする
  • ヘルパーT細胞:感染した細胞を一早く発見し、免疫細胞に指令を出す役割を持つ
  • キラーT細胞:ヘルパーT細胞からの指令を受け、感染した細胞を破壊する
  • 制御性T細胞:ほかの免疫細胞に攻撃の終了を合図し、免疫反応を抑制する働きを持つ
  • メモリーB細胞:抗原の情報を記憶する

このように、複数の細胞が連携して働くことで、体内に侵入した病原体のデータを記録し、同じ病原体が再び体内に侵入したときに分解して対応できるようになるのです。

自然免疫と適応(獲得)免疫の働き方

体内に病原体などが侵入すると食細胞であるマクロファージや好中球などが病原体を食べて攻撃します。食細胞は免疫細胞の司令塔であるヘルパーT細胞に食べた病原体のデータを渡して、どのような病原体が体内に侵入したのかを知らせる役割です。そのためヘルパーT細胞がB細胞やキラーT細胞に指令を出します。指令を受けたB細胞は形質細胞へと姿を変え、キラーT細胞とともに病原体への攻撃を開始します。

一度体内に侵入した病原体のデータはメモリーB細胞に記録されるため、再び体内に侵入したとしても被害を最小限に抑えてくれるほか、体内に侵入しないように働きかけます。このように自然免疫と適応免疫が働くことによって、ウイルスや遺物から人間の体は守られているのです。

自然免疫や適応(獲得)免疫が働く場所

適応免疫を獲得するために働く細胞は血液やリンパ液の流れに乗って、病原体が侵入していないか全身を常にスキャンしています。血液は全身をくまなく巡っているのに対し、リンパ液は心臓に向かって一方通行で流れています。体の各所に存在するリンパ節は関所のような役割を果たしており、細菌やウイルスが侵入してきた場合、食細胞のマクロファージやT細胞、B細胞、形質細胞などが戦って処理しているのです。

免疫細胞の異常と花粉症の関係

適応免疫が働いているのであれば、なぜ花粉症やアトピー性皮膚炎のように、同じ症状が繰り返し起こるのか気になる人もいるでしょう。実は花粉症やアトピー性皮膚炎は免疫の異常によって起こる病気です。免疫細胞は通常であれば病原体などの異物を攻撃の対象である「抗原」と特定しますが、免疫に異常があると本来なら敵ではないはずの自分自身や花粉を抗原と特定して攻撃してしまいます。これがアレルギー疾患です。アレルギー疾患の症状を抑えるためには、免疫細胞の働きを抑える治療が行われるのが一般的です。しかし、免疫細胞の働きを抑えることで、ほかの感染症にかかってしまうリスクもあることから、病気の原因となっている免疫反応だけを抑える治療法を確立するために研究が行われています。

自然免疫と適応(獲得)免疫の働きを高める方法

自然免疫で対応できる病原体の種類を増やすことはできませんが、働きを高めることで病原体が体内に侵入するのを未然に防ぐことは可能です。自然免疫や適応免疫を高めて、健康的な体を作るために役立つ方法を紹介します。

免疫細胞の一つであるマクロファージを活性化させる

免疫細胞のなかでも病原体に対して率先して働くマクロファージを活性化させると、免疫機能の向上が見込めます。マクロファージは白血球内に存在している食細胞で、病原体や不要な老廃物を食べてくれるので、傷を早く治したり、新陳代謝を調節したりするのに役立ちます。マクロファージが活性化した状態を保つと、自然免疫をはじめ、適応免疫を正常に機能させることにつながります。

LPSを含む食品を積極的に取り入れる

自然免疫と適応免疫の両方の機能に大きく関わっているマクロファージを活性化するためには、LPS(リポポリサッカライド)という成分が効果的であるといわれています。LPSは田畑や森林など自然のなかに多く存在しているため、野菜や穀物をはじめとした食品に含まれています。たとえば玄米や皮付きの野菜、めかぶといった海藻類など、できるだけ自然な状態の食品はLPSが豊富に含まれるといわれています。食事は栄養バランスや主食・主菜・副菜のバランスが大切ですが、LPSを含む食品を積極的に取り入れると、自然免疫や適応免疫の機能を正常に働かせるために役立つでしょう。

免疫力を高めるコツ

日頃の生活習慣を意識するだけでも、免疫力を高めるために役立ちます。今日からでも取り組める生活習慣のコツを紹介します。

睡眠の質を高める

睡眠を取り、疲労を回復させることによって免疫細胞がしっかりと働いてくれます。また、質の高い睡眠は免疫細胞が働くリンパ球を増加させる効果も期待できるといわれています。睡眠時間は最低でも6〜7時間は確保するように心がけ、睡眠環境を整えて睡眠の質を高める努力をしてみてください。

ストレスを溜めないようにする

ストレスが溜まると自律神経のバランスに影響を与えるといわれています。自律神経のバランスが乱れると、感染症などの病気にかかりやすくなるため、ストレスを溜め込まないよう、適度に発散するようにするのがおすすめです。リラックスできる時間を作ったり、趣味に没頭したりするなど、自分が心地よいと感じる時間を取るように意識してみてください。

適度な運動を行う

適度な運動はストレスの発散につながるほか、体温を上昇させたり、自律神経のバランスを整えたりする効果が期待できます。ハードな運動は心身ともに負荷をかけてしまう可能性があるので、軽いストレッチや散歩、ウォーキングなど、手軽に日常生活に取り入れられる運動を行ってみてください。

バランスの取れた食事を意識する

「体は食べたものでできている」といわれるほど、食事は健康に直結します。もちろん栄養素の多い食品を摂取するのはいいことですが、主食、主菜、副菜のバランスが取れた食事を摂取するのも大切です。また、朝食を摂取する習慣は体内時計を整えることにつながるため、免疫力アップに役立つといわれています。

まとめ

適応(獲得)免疫は、一度体内に入り込んだ病原体を記憶して感染や発症を防ぐ役割を持っています。だからといって適応(獲得)免疫を高めるために、病原体を積極的に摂取する必要はありません。自然免疫の働きを高めることで適応(獲得)免疫の働きも正常に保ってくれるので、普段から免疫力アップにつながる生活を心がけてみてください。

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