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マイクロバイオーム研究の専門家が語る!
マイクロバイオームに、なぜ、ビッグデータが不可欠なのか?

本記事の監修者

キム・ジュウォン

キム・ジュウォン

建国大学校 医学部 助教授

群馬大学で工学を、東京大学で生物科学を学んだ後、東京大学および千葉大学で医学博士号を取得。以降、日本と韓国で研究と教育に従事し、千葉大学との国際共同研究プロジェクトの責任研究者(2014〜2018年)、千葉大学の招聘教授(2016〜2019年)、光州科学技術院の研究教授(2023〜2024年)などを歴任。現在は、韓国の建国大学校 医学部 助教授として教育と研究の両面に携わりながら、老化およびマイクロバイオーム分野で国際的に活躍する研究者として注目を集める。

チ・ヨセフ

チ・ヨセフ

株式会社 HEM Pharma Japan 代表取締役(CEO)

ハンドン・グローバル大学にて生命科学の博士号を取得後、イスラエル工科大学(Technion)微生物遺伝体学研究室で客員ポスドクトラル研究員として従事。2014年、アジア Beneficial Microbes Conference Younger Scientist最優秀賞受賞などマイクロバイオーム研究での受賞歴多数。2017年、Dr.ホルツァプフェルと現HEM Pharma Inc.を共同設立。2025年、日本法人HEM Pharma Japanを設立し、現在は韓国本社および日本法人の代表を兼任している。

「マイクロバイオームは、これまでの疾患中心の医療から予測・予防中心のヘルスケアへ転換できる大きな可能性を秘めている。しかし、そのためにはマイクロバイオームのビックデータが不可欠だ」と、株式会社HEM Pharma Japanのチ・ヨセフ代表取締役(CEO)は語ります。チ代表が目指すマイクロバイオームのビッグデータとは何なのか、先端技術であるPMASをはじめ、進化を続けるマイクロバイオーム研究の最前線を紹介します。

マイクロバイオームがもたらす未来とは?

マイクロバイオームが健康のカギを握る。その言葉を耳にして、「腸活の話」だと理解した方も多いのではないでしょうか。もちろんそういった要素もありますが、マイクロバイオームは腸活という流行を飛び越えて、ヘルスケア業界に本質的な変革をもたらす存在である、と私たちは考えています。
過去、科学者たちはヒトゲノムが解読できれば、すべての病気が解明できると考えていました。今、この大きな期待をヒトゲノムに代わって背負っているのが、マイクロバイオームです。マイクロバイオームとは、体内外の微生物全体(細菌、ウイルス、真菌など)と、それらの遺伝子・機能・代謝物を含む総体を指す言葉で、腸内だけではなく、皮膚、口腔、鼻腔、膣など全身に存在しています。体内の微生物の細胞数はヒトの細胞数に匹敵するとされ、遺伝子数においてはヒトの遺伝子(約2万)を大きく上回る数百万規模にのぼると推定されています。これだけ膨大な情報量を抱えるマイクロバイオームを解読することによって、今まで解明できなかった疾患などの答えが出せるのではないか?と言われているのです。
つまり、マイクロバイオームを解明することで、医療のあり方も変わってくるわけです。従来の医療は、主に発症後の治療に重点を置いてきましたが、これからは、病気を予測し、予防する「精密医療」が中心となる未来がやってくるでしょう。「疾患中心」から「予防・予測中心」へ。そのパラダイムシフトを支える重要な要素の一つとして、マイクロバイオームが注目されているのです。

マイクロバイオームが注目される理由

それだけ大きな期待を背負うマイクロバイオームですが、その解明は単純ではありません。というのも、ヒトゲノムは人同士では99.9%が共通であるのに対して、マイクロバイオームは一人ひとりが大きく異なる構成を持っています。また、ヒトゲノムは生まれた時から亡くなるまでほとんど変わりませんが、マイクロバイオームは、食事、生活習慣、住んでいる場所、年齢などによって変わっていきます。つまり、マイクロバイオームは、一人ひとり違う上に変わり続けるという特徴を持っているのです。
また近年の研究により、私たちが摂取する成分の中には、腸内マイクロバイオームの働きによって初めて分解・変換されるものがあることが明らかになってきました。というのも、私たちが普段食べているものは化学式でみると、かなり複雑で分子が大きく、そのままでは血流に乗ることができないものが多いのです。マイクロバイオームはそれらを代謝産物へと変換し、体が活用しやすい形にする役割を担っていると考えられています。
そのわかりやすい例が、高麗人参です。高麗人参にはジンセノサイドという特有の成分を含み、抗酸化作用や免疫力向上などに役立つと言われています。しかし、研究の結果、腸内マイクロバイオームに適切な微生物を持っている人だけが、ジンセノサイドを代謝産物に分解できることがわかりました。つまり、同じものを摂取しても、体内でどのように活用されるかは個人差が生じる可能性があるのです。体内でマイクロバイオームが代謝産物を作らないことには、得られない栄養分がある。どの微生物がどんな代謝産物を作り出すのか、それを知るためにもマイクロバイオームのビックデータが必要なのです。

圧倒的に足りないマイクロバイオームのビックデータ

マイクロバイオームを解明するためには、マイクロバイオームのビックデータとなる圧倒的なサンプル数が必要です。しかし、このサンプルを集めることが非常に難しい課題でした。米国国立衛生研究所による『ヒューマンマイクロバイオームプロジェクト』では、2007年から9年かけて31,596件の糞便サンプルを集めることができましたが、EUが主導した『MetaHIT』では124人規模、オランダ主導の『LLDeep』では1,248人規模と非常に少ない数でした。また、数だけではなく、サンプルのクオリティーも考慮しなければなりません。保管する温度や分析方法など、同じ基準を持ったデータベースが分析には必要だからです。このデータベースの量が基礎となり、アルゴリズムの基本となるのですが、既存のサンプル収集や分析方法より再現性の高いデータ取得や解析を可能にする新たな技術が求められてきました。この限界を突破すべく、HEM Pharma Inc.が開発したのがPMASという技術です。

プラットフォーム「PMAS」

PMASとはPersonalized Pharmaceutical Meta-Analysis Screening の頭文字をとった言葉で、腸内環境を人工的に再現できるマイクロバイオーム解析の中心技術です。共同開発者であるホルツァプフェル氏と開発した技術で、私たちの腸内環境を体外でもシミュレーションできるようにしたものです。これまでは私たちが何かを食べて消化された後に、どのようにマイクロバイオームが関わっているのかがわからなかったのですが、それを体外に出すことでマイクロバイオームがどう動いているのかをシミュレーションできるようにしたのです。非常に高い再現性があり、体内で起こっていることと高い相関が確認されています。PMASの2つめの強みは、正確性です。PMASプラットフォームでは10万以上のサンプルを運用していますが、エラー率は1%以内です。そして、3つめの強みは、経済性です。ロボティクスやAI、自動化技術を取り入れることで、研究用途にとどまらず実用化を見据えたプラットフォーム設計がなされています。科学的妥当性と実用性の両立を目指した技術であることが、PMASの大きな特長です。

マイクロバイオーム研究を大きく発展させるPMAS

PMASがどのような解析技術を持っているのか説明していきます。PMASは、メタカルチャロミクス技術を応用した技術を有し、腸内環境の再現を目指し、体外でマイクロバイオームの反応を解析するプラットフォームです。従来技術が「存在」や「代謝物」を中心に解析してきたのに対し、PMASは条件を設定したうえでマイクロバイオームの応答を観察できる点に特長があります。これにより、体内で起こり得る反応をより実験的に検証することが可能となりました。これは、AIを搭載したスマートフォンのように正確で網羅的な解析ができるようになったというわけです。

開発に10年以上かけ、信頼性も実証

私がホルツァプフェル氏と共同創業したHEM Pharma Inc.は、このPMASという技術の実現に10年以上の歳月を費やしました。PMASの技術の根幹である腸内環境の再現に5年、そして試験および前臨床研究に数年を費やし、PMASシステム内での信頼性検証を行いました。5,000件以上のサンプルを検証して、システムの最適化をしていった上で、商業化を決断しました。現在、PMAS技術は、日本においても特許を取得しています。*特許第7301220号
私たちHEM Pharma Inc.は、このPMASサービスを立ち上げ後、韓国アムウェイと共同し3年弱で約100,000件以上のサンプル収集を完了することができました。これは世界最大級のマイクロバイオームのビックデータと言えるでしょう。そして、日本でもPMASサービスの提供をスタートしていくことで、さらにビックデータを拡充していきたいと考えています。

腸を知ることで、一人ひとりに寄り添うヘルスケアを

アムウェイは、腸内マイクロバイオームに特化した韓国発のバイオベンチャー HEM Pharma Inc.との協業を通じて、マイクロバイオーム技術を活用したヘルスケアソリューションの開発を推進しています。
なぜなら、私たちはこれからの健康・予防医療を担うのは、マイクロバイオームを取り入れた「パーソナライズド・ヘルスケア」だと考えています。HEM Pharma Inc.が開発したPMASは、腸内環境の再現を目指した先進的なシミュレーション技術であり、個々の腸内反応を解析する新たなアプローチを可能にしています。これにより、一人ひとりの特性に応じた健康戦略の構築に向けた可能性が広がっています。「病気を治す社会」から「病気を防ぐ社会」へ。アムウェイは、マイクロバイオーム分野におけるリーディングカンパニーを目指し、マイクロバイオームのビッグデータに基づくパーソナライズド・ソリューションの提供を積極的に行っていきます。

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